わたしの体は、あなたを潤すためにできている/あみ
 
いつか
遠い昔の夜
暗い海の
浮かぶ月に例えてくれた
何も残さない
わたしの体を抱いて
その透明なまぶたでは
すべてが見えてしまうね と
力なくゆだねる
その体は
いつか
水になるのだと
産まれたばかりの水になるのだと
あきらめに満たされて
月に照らされ
眠る
時間に漂うだけの
体から
ひとしずく
水が産まれた

綺麗だ と
あなたはそれを世界にして
わたしに苦しみと喜びを与えた

ひとつの夜が終わるたびに
行方も
わからないまま
波の意志の隙間を
泳いでゆく
あなたの名づけてくれた
海の月
わたしが水に返るまで
誰かの光を
淡く
乱反射させながら
いつか
ほころびではなく
全てを水に
あなたを潤すための水に



ただいま

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