あの夏「拝啓、ジョンレノン」/ふくだわらまんじゅうろう
 
「拝啓、ジョンレノン
ぼくも貴方もたいして変わりはしない
そんな気持ちで貴方を見ていたい
どんな人でもぼくと大差はないのさ…」
そんな詩を声高に呼ばわる声が木霊する季節があった
今からちょうど一回り過去のことだ
私は定職もなく、運気の波にも乗れず、心細い日々を送っていた
だけどそこには恋人がいた
傍目には、幸福とは呼び難い取り合わせだったようだけれど
私の幾人かの親族も
彼女を斜めの目線で見た
ありがたくも警告めいた忠告の言葉も頂いた
しかも私の心さえもが、他の女性に向いていた
ただひとり
彼女だけが本気だった
本気で私を求めていた
求めて、追いかけてきた
彼女の
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