絵に描いたような存在/光井 新
テーブルの上に置かれたマカロンは
食べるのがもったいなくて
子供の頃大切にしていて使えなかった色鉛筆のよう
ピンク、みずいろ、きいろ、きみどり
思い出せる色はぜんぶ淡い
金魚すくい
浴衣を着て行った縁日は三日前、それから
小さな金魚鉢の中に入れている金魚が苦しそう
その赤だけがはっきりしていて
キラキラとした水の中に溺れていく
とても甘そうな赤
世界を塗り潰していく
午後の陽にぼんやりと光るきみの白いシャツが
風に揺れるカーテンと重なった一ページ
開いた手帳には
パンダ、うさぎ、ねこ、きつね
意味もなくシールを貼っていく時だけがしあわせ
指先に集まったさびしさを見ている
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