文房具日記/A道化
 


一学期の終わりに盗まれた一本の鉛筆の
HBの日々の夕刻にサラサラと落下した
「ばいばい」の落書きみたいなひとり言には
いつだって行間が無かった


下校時刻だった、タ、タ、タ
無い行間をわざとこじ開けるように残す
白いスニーカーが、タ、タ、タ、と音たてたら
盗まれなかった五本の鉛筆が、カタタタタ
ステンレス製の筆箱の中で鳴り続ける
そのまま、ゆけ


なにもかもわざとだよと言い切って
自分から取り残された子供専用の定規で
ああそのままひとおもいに真っ直ぐ君は
君が定めた夏の下校時刻を、ゆけ


2009.8.21.
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