丸、に尽いて。 /服部 剛
夕暮れの歩道橋から
今日も街ゆく人々を、眺める。
一人として同じ顔はないけれど
無数につらなる足音に耳を澄ませば
ぼんやりと
誰もがのっぺらぼうの
丸い顔に見えて来る
歩道橋に立ち
それを眺める僕も
遥かな昔
丸いいのちの姿をしていました
( 人々の賑わう声は、遠い日の夢・・・ )
森の緑の上に沈む、夕陽は丸い
東の夕空にうっすら浮かぶ、月は丸い
僕がこうして立っている、地球は丸い
老いも若きもあらゆる人の、こころは丸い
いつか、歩道橋から眺める
暮れなずむ街の風景が
家路を辿る人々が
僕自身が、消え去る日も・・・
○は、遺(のこ)る。
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