梨畑のAMラジオ/リーフレイン
 

梨畑の湿った雑草がひんやり茂る足元に、いくつもの虫穴が口をあけ、樹液を狙う甲虫が幹の洞にたごまっていた。木の枝にいつも架かっていたのは黒い小さなAMラジオで、夏はひたすら甲子園の、歓声とブラスバンドとアナウンサーの絶叫が 緑の葉をさやさやと吹く風にのって梨畑の中を駆け抜けていた。じんじんと耳に響く蝉の声がラジオの音をかき消さんばかりにつんざくのだが、不思議と聞きたい声は輝いて、蝉音を超えて首筋を伝う汗の中にもぐりこんできたのだ。

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