ワンダーラスト/山中 烏流
 



忘れた景色のことは
もう、分からないから
私を追うのなら
出発は
最終列車がいい

戻るつもりのない時間帯に
その街を出てきたことだけは
今もまだ
覚えているから
どうしても、出てくるつもりなら
きっと、最終列車がいい


空だけを見たいのなら
飛行機の窓を覗けばいい、と
老人は
私にそう囁いていて
まるで
そこに隔てがあることを
彼は
気にしていないかのようだった

しかし
彼の言った景色を
私は見ないままで
出発してしまったから
その後の彼を知らないし
その顔も
もう、忘れてしまった



私が歩くのは、誰かの歩いた
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