疲弊しきった身体は何を生み出せるのか道に転がる蝉に問う/朽木 裕
包丁を光らせて何か切ろうと思ったが、何を切ればいいのか
分からなくなって足下に、ミルクを。
オムレツにつけるケチャップが見当たらずに俺は腕を
切りつければいいのかと思う。
結局、痛みを拒否して赤く染まったオムレツを想像しながら喰らう。
外はからからに晴れているのに、何故か黒い洋傘を手にした。
きっと雨が降る。降ると思う。
「じゃあ行ってくる」
死に猫に声をかけて立ち上がる。
戻るまで居なくなるなよ、お前。
玄関先に干からびた蝉。
雨が降るといいなと思う。
身体の中と外で雨が降るのをなんとなく可笑しく感じて笑う。
俺は通りがかったゴミ捨て場に傘を置いた。
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