森は人に届く/石田 圭太
記憶を
残す
出来るだけ
美しい形のものを
渡す
それが
なんなのか知ったのは
ずっと
後の話
+
いつか
死ぬことを
知らずにうまれ
しばらくは
そのまま育った
小鳥が
ひとことだけ鳴くと
温かい
ひとまわり
大きな羽が
ふんわり
包み込んでくれる
優しい
朝の翌朝
木の枝に
巣は
見当たらず
その根元に
巣は
見当たらず
行く先を
注視すると
吹き飛ばされ
残されていた
命の痕跡
+
代々
墓守りのように
守る
行く先に
何も
変わらないでいられる
限界の線を
願いは
いつだって
表と裏
こんな爪がなければ
よかった爪がなければ
生きられないように
ぼくたちは
出来ていた
+
世界が座り込んで
ひとつずつ
諦めている
それは
言葉の森
なんて
単純な比喩ではなかった
手紙をひらくと
届く森があった
いつまでも
絵本には
それだけについて
描かれていた
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