旅に出ようか/小岩井祐子
 
ねぇ、ママ

硝子の靴は
彼女にしか
履けないんだよ

暗闇は
僕らを照らしては
くれないんだよ

そうだろ?ママ



ケータイのメモリは
減らじとも増えもせず

誰もあたしの相手なんて

みんなこの空の下で
あくせく働いているのさ


ママ

ねぇ、聞いてるのかい?



青い鳥の首を食べたのも
君だねママ

紅いカーテンがもう
僕らを迎えにきているよ

まだエピローグまで
辿り着いてない
ってのにさ

いい加減
目を開けたらどうだい


いつまでも
椅子の上で
撫でられてる自分を
期待してないで


さぁママ


次の町には
なにがあるだろうか

この間買ったばかりの
お気に入りの靴を
鳴らして

ビロードの夜は
すぐそこまで
迫ってきてるんだから
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