舞台裏/山中 烏流
 





隣の部屋の老婆が
拾ってきたのであろう西瓜を
妹は器用に食べ進め
その残骸を
彼女は私の枕元に置き去り
遂には
そこから芽が生えてきて
いつしか
私の寝床たる場所は
西瓜の名産地だと
言われるようになってしまった


母親は
窓辺の安全装置である
仮想エアバックに打ちのめされて
これでもかというくらい
うなだれながら
誰も
見ていない夜中のうちに
彼女曰く趣味だという
内職の腕を
存分に振るっているそうだ
私が見に行った時
そこには
誰もいなかったけれど



   *



当たって砕けろ精神を
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