広島、長崎/1945年夏/遊佐
その記録に関して
僕の記憶の倉庫には
僅かな記述でくくられた薄っぺらな本が一冊しかありません
でも、その本を開く度に
痛くて堪らないと
僕の中の良心が泣き叫ぶのです
痛くて、痛くて堪らないのだと…
だから僕は
その本をそっとしまい込むのです
毎日読むには辛すぎるから
僕の記憶の倉庫の一番奥に
そっとしまい込むのです
そして時々
そっと取り出して書き足すのです
この薄っぺらな本が
いつか、誰かの倉庫の真ん中に飾られますようにと
書き足すのです
今は粗末な薄っぺらな本だけど
いつか世界を形作るような本になれよと祈りつつ…。
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