身体の海【3/6】ガチャン。痛い自愛、/A道化
目の前にピアッサーとアイスクリームが用意されていたとしたら、迷わずピアッサーを手に取っただろう。アイスクリームでは、駄目なのだ。もしもアイスクリームだけが目の前にあったとしても、手を出す気にもなれなかっただろう。もしも、もしも、食べたとしても、苦痛が和らぐことはなかっただろう。あの夜、私にとって、アイスクリームや星や花の香りや音楽なんて、何の意味もなかった、…と言うよりは、存在していないも同然だった。
ただ、私がいた。
ただ、痛い心があった。ただ、体があった。それしかなかった。
そして、何故かしら、どうしても、体に、痛みが必要だった。
ピアッサーが、あった。その数日前に私はちゃんと用意していた。
私は明らかに痛みを必要として、体への痛みを求めて抽斗をまさぐりパッケージを破り剥き出されたピアッサーを耳に宛がったのだ、そして、
*
ガチャン。
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