八月の記憶に沈む/衿野果歩
 
響く蝉の鳴き声
からみつく湿度
伸びる影を踏む
緑が眩しい午後

瞼の裏に
あの人がフラッシュバックして
立ち眩む

溶け出す思い出に
輪郭が歪んでいく


響くあの人の声
からみつく記憶
あの人の面影に
とおざかる午後

立ち眩む
あの人がフラッシュバックして
わたしは

八月の記憶に沈む

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