幻人形/within
」
「母さん! 」
わたしはできるなら抱きつきたかったが、頭の外れた身体では動こうにも動けなかった。
「父さんが死んだんだよ」と母さんが言った。
それはわかっていた。母さんはわたしの頭を首にのせようとしたが、うまくはまらず、もう面倒だね、と頭を傍に置き、身体から腕を引き千切り、足を引き千切り、胴体とまとめて黒い海へ投げ捨てた。手足、胴体は死んだ魚のようにぷかぷかと浮かんでいた。わたしは母の脇に抱えられ、これで十分だよ、と家路についた。手も足も胴体もなくなったがわたしは全然悲しくはなく、それよりも家で永遠の孤独の中で眠っている父さんのことが気がかりだった。
「母さん、本当に父さんは死ん
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