幻人形/within
 
は訪れた。「わたしの腕を大切にしてくれていたのね」とわたしはにっこりと笑顔を湛え、目を開いた。
「この腕は君のものだから」
 と少年は穴を掘って腕を埋めようとしたが
「いいえ、それはあなたのものよ。わたしの思ひ出だから、どうか大事に持っていて」
と言うと、少年は、わかった、とわたしの腕を自分の両の腕でしっかりと抱いた。
「ありがとう。わたしももうすぐ生まれる」
 そう言うと少年もにこりと口角を上げて微笑み
「夏にまた来るよ、必ず」
 と立ち去った。夏には酔芙蓉が花を咲かせることだろう。そしてわたしは実を結び、産声を上げる。

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