回転芝居/薬指
 
に違いないって
やっぱりきみは言い出した
回転芝居はきみの故郷だ
二度と帰れない悲しい家だ
なんとか誤魔化して居座るがいいよ
思い出すんだ
空を横切って行くインド象の群れ
母さんの中で聴いたあの歌


蝉にそっくりの奇妙な声で歌っているあの女はね
喉の奥に真珠を埋めているんだって
鞭をもてあそんでいる猛獣使いは
むかし虎に片方の耳を食いちぎられて
胸の奥がまだ恐怖で震えているんだって
いつか僕にも傷ができるかな


月はみるみる地面に迫ってくる
僕たち回転芝居の一座は東へ逃げるだろう
君は街の隅にホテルを見つけたけれど
いつまでもそこにいちゃいけない
どんなエンジンも動かせる
魔法の鍵をあげよう
僕たちについておいで
旅に出よう
会う人すべてが孤独だろう
すべての家は僕たちを憎むだろう
いつか一番高いあの塔が
月面に押し潰されたとき
僕があの歌を聴かせてあげる


黒猫はみんな空を飛べる
魚たちは絶望をやり過ごす術を知っている
聴こえるだろう
夜空を飛ぶ白い蝶の
終わることのない歌声が



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