PCを捨てよ 町へ出よう(2)/花形新次
ってある?」どうやら彼女はその質問に腹を立てているようだった。
「生まれてから何も見たことがなくて、恐らくこれからも一生何も見られない人に対
して、何でも見ることができる人間がそんなこと訊くって、ゆるされるのってんの
よ。」彼女は飲み干したコップをドンとカウンターに置いた。
「ねえ、あんたどう思うのよ。」彼女の目は完全にすわっていて、
僕は、できれば関わりたくないと思った。
しかし、彼女は「ねえ、ねえ、どうなのよ、あんた!」とジリジリと僕を追い詰めてきた。僕が答えに窮していると、
「あんた、別に何とも思っちゃいないんだろ?ええ?」そういうと
彼女は「ケッ!」と吐き捨てるように
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