1Q68/ふくだわらまんじゅうろう
騙したり
騙されたり
そうして砂漠の真ん中に墜落することすらできずに
人生を閉じる
意味もなくアイスクリームを食べたがり
ビタミン剤を飲んで安心する
保険屋に騙され
顧客を騙し
自分を裏切って
契約書を守る
文字の砂漠に埋もれ
映像の海に流される
名もなき流星のことなんて気にもかけない
当然のように偽預言者に騙されている
男の子は
その砂漠で見られる一番星のことを
いつまでもいつまでも
心に
そして愚かな
愚かで大いなる
その一歩を
今日の崖から
明日の崖から
その年の
6月22日のこと
人知れず
ひとつの流星が砂漠の真ん中に
落ちた
その流星の息を飲んで
二人の子供が日の本の国に生まれた
ひとりは女の子で
後に有名な小説家になり
ひとりは男の子で
後に無名な詩人となった
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