東京少年 「国立」/虹村 凌
 

「そうなんだよ。でも、事件にはしたくないって、結局そのままなんだ」
「それでいいのかよ…」
「アイツがそれでいいって言うから、俺もそれを受け入れる事にしたんだ」
「そうか…」
 そんな事件が身近で起こっているとは考えたくも無いが、実際にあったのなら仕方が無かろう。それを受け入れると言うのだから、黙って見守るしかないだろう。大体、俺が干渉できる事でも、するべき事でもない。喋り続ける川村を見ながら、そんな事を考えていた。そんな恋人が居る事を、羨まなかったと言えば、それは確実に嘘だ。確かに半年前はローザがいたが、別に痛手を負う程の別れじゃなかった。いや、別の意味では、大きな痛手を負って
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