東京少年 「国立」/虹村 凌
ものではなく、彼を狡い屑としてしか見る事は出来なくなった。
その一連の出来事で、人間を信じる事に疑問を感じる様になっていたのは事実で、それを教えてくれた中路も、正直信用しかねていた。
ただ、俺自身の容姿が醜くなった事もあり、別に俺を捨てる人間が出てきても、おかしくは無いと思っていた。俺の友人が俺と同じ状況に置かれた時、今の彼らと同じように対応出来る自信は無かった。それくらい俺は醜くなっていた。だから、粕村にとって俺を捨てる絶好のタイミングだったのだろう。丁度、俺の精神が捻れ始めていた事もあり、拍車が掛かったのかも知れない。認める事は出来ないが、その程度の屑と十年も付き合っていた俺が悪いのだろう、とも結論付けていた。
授業の終わを告げるチャイムと共に、生徒達が食堂へ飛び込んでくる。パン売り場は築地の魚市場を思わせるような盛況ぶりで、あっと言う間に人気のパンは売り切れてしまった。その様子を眺めながら、俺と川村は世界史の授業の為に、食堂を出て校舎の階段を昇り始めた。
中庭から空を見上げると、重苦しい曇天であった。
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