東京少年 「新宿 (二)」/虹村 凌
 
された別れも、事実だった。認めない訳じゃないけれど、人間の心はそうも簡単に変わるものなのかと、俺は不思議な気持ちにさせられていた。
 ミスタードーナッツを出て、ローザと別れてからの記憶が無い。気付くと俺は、家のベッドで午睡から目覚めたところだった。まだ太陽は高い位置で輝いており、あまり時間が経っていないことを教えてくれた。
 俺は窓を開けてベランダに立ち、セブンスターに火をつけた。ジリジリと音を立てて、白いセブンスターが、オレンジ色を境界として、灰色に変わっていく。短くなったセブンスターを見て、ふと思い立ち、左腕にギュッと押し付けてみた。想像していたよりも、遥かに熱くない煙草を驚きながら見ていた。しばらく押し付けていたが、どんどんと熱が冷めていくのを感じて、ベランダの排水溝に吸殻を放り込むと、洗面所に向かって、傷口を水で流した。
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