東京少年 「新宿」/虹村 凌
 
画面を眺めていたが、やはりラジオ体操第二のメロディーを聞き続ける事が出来ず、灰皿で煙草をもみ消してから自室に戻った。オレンジ色のユニクロのパーカーと、茶色いゴールドウィンのニット帽を見につけて、黒いリュックを背負って部屋を出た。
「行ってらっしゃい。気をつけてね」
 祖母は画面から目を離し、俺の方に顔を向けたまま、ラジオ体操第二を続けていた。俺は食卓の上のセブンスターを掴んで、
「行ってきます」
 とだけ答えて玄関のドアを閉めた。
 待ち合わせの予定は昼近くだったが、目が覚めてしまったので家を出た。どうも落ち着かない。起きてから5回ほど携帯電話を開いて確認したが、特に何も無い。とにかく、12時まで待つしかなさそうだ。俺は近所のコンビニで漫画を立ち読みしたりして、どうにかこうにか時間を潰したが、それでもまだ待ち合わせまで4時間はある。仕方なしにコンビニを出て、新宿駅に向かった。
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