東京少年 「新宿」/虹村 凌
 
列に嫌気が差し、夜道を一人で歩いて帰ってきた、と言うツワモノである。それでも70過ぎである。流石に、夜道を老人一人で歩かせたくは無かったので、連絡のひとつくらい欲しかったのだが、面倒だったらしい。
「おはよう」
 祖母の前を通過しながら、リビングから俺の部屋に入る。
 今年度から、俺は祖母と暮らしている。別に両親が離婚したとかの複雑な理由ではなくて、単に妹が親父の実家に近い中学に受かったので、両親と共に親父の実家に帰り、その中学に通う事になったのだ。俺は母方の祖母と同居しながらこちらの高校に通い続ける事になった。その俺と祖母は、小田急線沿いの祖師谷大蔵と言う駅の近くに建っている、マンシ
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