二十歳を過ぎたモラトリアム/百瀬朝子
 
幻影に怯え現実に目をつむる
そんな大人になってしまいました
あたしは二十歳(はたち)を過ぎたモラトリアム

あんなに幸せを感じた日々もあったのに
持続できないあたしは罪人のよう
檻の中で一人静かに
孤独が流れ去っていくのをじっと待つ
隙間風の冷たさに友の影をみた

揺れては女のあたしが云う
「老いればガラクタ同然のかわいさならば
 使ってなんぼの武器にしなさい」
揺れては人のあたしが云う
「そんな武器で手に入れたぬくもりは
 心まで温めることができるのか」
戦っている
争ってはいない
彼らはあたしに女であってほしがる

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