回帰する海/あ。
 
抱えきれないほどに大きくなりたかった


青々としたたくさんの細長い波が視界を埋め尽くし
何処まで続いてるのかなんて見当も付かない
涼しい風が吹く頃には黄色く重い稲穂が頭を垂れ
やがて精米されて誰かの栄養になるのだろう

懐かしい光景だと言えるほど
緑に囲まれて育ったわけでもなく
初めて見るわと感激するほど
ビルに囲まれて育ったわけでもない

強めの風にゆうらりと身体を傾かせながら
草色の匂いをそれに乗せながら
控え目に存在を表現している姿

使われている色は決して多くなくて
その数少ない色でさえも何処か古びていて
骨董市で売られている名もない陶器みたいに

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