一葉の札/光井 新
 
もあるが、ちゃんと親孝行させてあげたいという、親不孝者だった私の親心でもあるのだ。私は毎朝、墓参りの度に、親が生きているうちに親孝行をしておけば良かった、と後悔している。そんな思いを息子にはさせたくないのだ。しかしよくよく子供の事を考えてみれば、釣竿も浮きも、私の手で作った物こそが良いのであろう。この辺りでは、子供達ばかりではなく、大人の釣り人からも中々評判が良いのだから。釣竿でないとすればおもちゃか? しかしおもちゃも、手作りの物で遊んで育ってほしい、と父は願っているのだ。あと何年かしたら、この父よりも上手く、器用におもちゃや釣具や簡単な家具などを作れるくらいに成長してほしい、などと密かに楽しみ
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