一葉の札/光井 新
五千円貰った。とても嬉しかった。名も無き私が、初めて自分の力でお金を稼いだ。
今時五千円といったら、他人様から見ると大した金額ではないであろう。しかし貧しい私にとっては、大金である。
その大金は私の地道な努力の果報、宝物として、一生使わずにとっておきたい、という思いもある。しかしお金はお金、使ってこそ意味がある。
一体何に使おうか? いつの時代も、貧乏人とはいざ大金を手に入れると、慣れない金の使い道に頭を悩ませるものである。
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ここはやはり、家族のために使おうか?
私達家族は、こちらに来てからそういえば今まで、現金というものを殆ど使った事が無かった。現金を殆ど持って
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