それぞれの夜/八月のさかな
 

どんなに顔がくずれても
涙がかわいたらお化粧をなおして笑顔をつくる
顔を洗ったらまた泣けばいい
悲しみや寂しさは敵じゃない

どんなに足が痛くても
夜がくればねむり、朝がくれば目をあけて
歩きだすことはやめられない

だから今夜は
いつもよりすこしふくらんだまぶたを
明日のためにあたためてねむる

それがわたしにとっての生きていくということ


胸をしめつけるこの痛みも
いつかゆっくりわたしに溶ける

いくつもの悲しみをやさしさに変えて
またいつか、いとしさに巡りあえますように


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