あの夜怯えたのは/中原 那由多
 
醜い姿でも暗闇に溶け込めるなら
私はそれでもかまわない
腕にできた赤く汚れた傷が眠っていてくれるなら
終わらない夜であってほしいと願う


鎮静の歌が聞こえる
回帰の匂いが立ち込める
私はふと、問いかけた

始まるものは夢だけか、と

通りすぎの灯りでさえ相手をしないというのに
虫は歌い続けた
夜風は流れを止めはしなかった
涙を流すならこんな日がいいと
泣きたくないのに呟いた


この時の行く末も
崩壊のエンドロールのことも
全てあの青色が知ってくれているけれど
目が覚めてしまったら
また独り取り残されてしまうだろう


それならいっそ、


いっそ夜になってしまいたい


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