アメリカの英雄に捧ぐ/服部 剛
 
are the Worldが流れ出す 

その頃日本のとある町では 
老人ホームの風呂場で働く 
ずぶ濡れのTシャツ・短パン姿の僕が 
あなたの歌声を背に 
お爺さんの骨ばった背中を 
ごしごしと磨いていた 

友達でもないのに僕は言う 
マイケル、 
僕はムーンウォークもできないし 
英雄なんかになれないまんま 
この変哲も無い出来損ないのネバーランドで 
毎日安月給に喰らいつこうと 
しょっぱい汗水、垂らしているよ 

自分の顔にメスを入れる 
勇気さえ持たずに 
格好悪い自分のまんま 
ありきたりの詩(うた)を 
こうしてここで、語っているよ 

誰も知らない深夜 
見上げた 
夢の星空に 
足音の無いムーンウォークの黒影が 
ましろい月を、横切る 

あの日、客席を埋め尽くした 
何万人もの歓声が今宵 
星々の囁く夜空に、響くだろう 







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