メランコリック.夜間行殺法/影山影司
たまま指先で手術を行う所を見ると、視力だって抜群だ。
俺の体は何処も悪くないんだ。
メランコリックは隙を見ては俺の臓器を取り替える。
俺は日々、まじめな大人になろうと頑張っているのに、気がついたらタバコの嫌な臭いのする大人になっている。メランコリックが俺の胃袋を取り替えたときなど、酷い悪臭がするものだから終日便所でえづいた。
手術はあっという間に終わる。動脈一本、肺胞一つ取り替えるだけの時もある。俺が慌てて目を覚ましたときには既に、メランコリックは俺の臓器を闇市で売り払っている。俺の臓器は高く売れるんだ。だからメランコリックは毎日やってくる。
俺は冷蔵庫じゃない。生きの良い培養槽でもない。
今日、ついにメランコリックは俺の右目をもって行きやがった。左目で右目を見ると、右目は左目に比べて随分黄色い。黄色の電灯で照らしたような世界。いや、ニコチンが染み付いたような世界が見える。
ぬるま湯に潜って瞬きをしても、揺らめく水面がまだ黄色い。
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