メランコリック.夜間行殺法/影山影司
すっかりぬるくなった湯に体を沈めながら、浴槽の堅さに身を寄せる。眠るのは嫌いだ。夢を見るだとか、人生の無駄だとか、そんなくだらない理由じゃない。そもそも感情に理由を求めるヤツは総じてクソだ。まるで脳味噌の仕組みを全て把握しているんです、と言わんばかりに長々と高説垂れる輩はその口で詐欺でも働けば良い。
窓際に並べたラジオから、ノイズ混じりに声。
底辺労働者の憂いを歌った曲を紹介するトップスターDJ、薄気味悪いハングル表記の言語を説明する女、どこかの道路で発生した追突事故。誰と誰が結婚したか、その顛末。株価、ドルの値段、大統領の表明。
耳を傾けていると、いつの間にか意識がずるりと抜け落ち
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)