ある日の夏、水の爆発/あ。
暑さにうなだれている名も知らない花は
剥がれかけたマニキュアと同じ色をしていた
使われているひとつひとつの配色が
くっきりとしたものばかりなのは何故だろう
まぜこぜしないのがこの季節で
曖昧さを好まないのがこの街なのかな
ペットボトルのミネラルウォーターだけが
唯一色を持っていなくて
透けた液体は染まることなく勝手気ままで
そんなことにふっとこころがゆるくなる
前から歩いてくるサラリーマン
営業の途中かな、スーツが暑そう
ポケットからハンカチを出して額を拭っている
アイロンの線が少しだけ柔らかく歪む
きちんとした奥さんなのだろうね
赤信号で自転車を止め
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