「季節と背中」/菊尾
いつからかその身体は凍えてしまっていて
今まで僕が得意としてきたやり方ではどうにもならなくなっていたんだ
時間が奪った熱量が圧倒的だったってこと
それを思い知らされて途方に暮れていた
窓に映った顔に怯えたんだ
なんて言ったら及第点だったんだろう
なにを思ったら正解だったのだろうか
二人の日々は今にして思えば不自然で
ラボの匂いが鼻から取れないままで
お互いに実験体だった
今、感情が乏しく思えるのは
そんなのを理由にしているからです
背中から抜いていった
目もくれないで途中から追い抜いた
背中だけ見せつけて
あくまでも助走期間だ
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