パブリック・バス/百瀬朝子
公衆浴場のぼんやり広がる湯気の中
いろんな裸がごろごろしている
あたしだって そう
ひとつの肉の塊に過ぎない
すべる足元にご注意を――――
それにしてもここの照明は明るすぎます
乳房に抱かれた幼子が
四十一.八℃の湯船の中をじたばたしている
まるで産まれたての赤子のように
小さい男の子がすべって転んだ
尻餅による痛みにひとり耐えています
ここは女風呂 男の子の乳房はどこへ行ったのでしょうか
温泉の備えつけのシャンプーは
髪の毛がごわごわするので嫌いです
リンスー・イン・シャンプーなんて最悪です
どこにリンスーが入っているという
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