夢を見る人/あ。
 
夢に溺れた人がいた

夢に溺れた人は口を閉じなかった
本棚にはおとぎ話と空想の国の絵本しかなく
晴れた日には空を眺め花と歌い
雨の日は水滴に合わせて踊っていた

夢を捨てた人がいた

夢を捨てた人は口を開かなかった
瞳はいつも一点しか見つめておらず
風の日には帽子を押さえて顔をそむけ
雪が降れば屋根を直して面倒を憂いた

ひょんなことで二人は出会った
当然、分かり合うことなど出来なかった
はずだった

夢に溺れた人は時々黙るようになった
夢を捨てた人は少しずつ口を開き始めた

様々な季節や天気が間を通り過ぎる

気付いたら二人の視界は混じりあっていた
浮かれすぎず儚みにとらわれすぎず
ニュートラルな目線を手に入れていた

晴れたり雨が降ったり
風が吹いたり雪が降ったりした
何度も何度も繰り返された

二人の血を引いたものがたくさんいる
この星の全てが、二人の子孫
溺れず、捨ててもいない
夢を見る人が、そこにいた

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