「Father’s Day」/月乃助
私が物心を付いた頃
入退院を繰り返す父は、
心臓病の、体の弱い人でした
それなのに、
父の笑顔に
ひどく私を幸せにする力があって、
それを見るために小さな私は、
クレヨンで何枚もの絵を描きました
横にしたり縦になったり
病室の白い壁に貼られ
私の描いた
未来の町は、
隣のベッドの壁までも侵略し
それでも
父は、また一枚その未来の町が大きくなると
楽しそうに笑ってくれるのが、私は嬉しいのです
だから、
十二の時に、父が亡くなった後も
私はその町を絵描き続けるのです、今も、これからも
父と一緒にオレンジ色の街を
空を駆ける車でビルの谷間を飛び去りながら
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