右向きの世界/なかがわひろか
右へ倣えってさ
右にはきっとすごいことが待っているんだ
だから僕はじっと右に倣い続けた
僕はずっと右に倣い続けたんだ
きっとそこにはすごいことが待っているって
僕は左を向くのが怖かった
僕は右の人の後ろ顔だけを
ずっと見ていたよ
きっと僕の左側の人も
僕の後ろ顔を見ていたろう
僕は間違いのないように
すごいことがいつ起こってもいいように
正しい日々を生きている
誰も間違うことのない
正しい毎日さ
ああ僕は幸せだ
こんな風に安心して
毎日を生きられるんだから
ああ僕はなんて幸せなんだろう
誰にも哂われないし
誰も哂いやしない
ああ右を向いていてよかったな
ああきっとこれが
すごいことだったんだな
ああ僕は幸せだな
(「右向きの世界」)
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