不知火(しらぬい)/月乃助
 
 青い月明かり
 寂しさに
 海峡の不知火(しらぬい)を手に寄せる

 青炎の小さな疼(うず)き

 いるはずの
 待ちわびる男に知らせる灯し火
 潮風
 波の音の磯小屋
 揺らぐ燭光がガラス窓に跳ねる夏の夜

 女丈夫を笑う
 蔗糖色に焼けた白い歯の男は
 徐々の黒い波
 肌を逆立てる
 頑健な裸を清める禊の潮に
 体を震わせ

 背に闇の飛沫が散る
 女を、女だけを、欲する腰は月明かりを裂いてみせる
 白露の海の水を滴らせたまま
 わたしの体を抱きしめに
 来い


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