映画家さん/新崎
 
「あたい映画家になるの!夢は大きく目指せ海外」
夢見て高校を飛び出した桂木さん
窓の外から走り出す桂木さんが見えた

野を越え
山を越え
たくさん街を通り過ぎ

野を越え
山を越え
きっと途中のファミレスでご飯を食べて

野を越え
山を越え
海をも越えたのかな?

噂話もなく
風も便りなんてくれないし
虫も何かを知らせてはくれない

6年ぶり地元に帰って 街で見かけた彼女
変わったところと言えば
腕に可愛らしい赤ん坊を抱いているところ

「映画家(?)になれた?」
「もちろんよ オフコース!」
「映画を作ったの?」

いいえと要領の得ない答え
あたい自身が映画なのよ
そんなことまで言う始末

桂木さんの赤ちゃんを見る
金髪で青い目の子
でも目元は桂木さんそっくり

映画家とか桂木さん自身が映画とか
全く意味わかんないけど
どうやら彼女は彼女で 海を越えたのかも
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