「海が見える丘」:童話/月乃助
桜が潮風の中で散り、雪のように舞っていました。
この町にも春の終わり、そんな季節がやってきています。
「わあ、きれい」
桜の先に、海峡の光る景色があります。
「ほんとう、いいお天気。気持ちがいいね」
お母さんは、帽子のひさしを少しあげて、目の前にある光の水の輝きを確かめるように見つめています。その海峡の向こう側には、ごつごつとした山の白い雪が、陽をあびて海峡とおなじように光の中です。
「お山、白い」
「そうね、でわでわ、こちらもお山に行ってみますか」
海岸線の小さな丘のそこには、今終わろうとしている黄色いラッパ水仙の花たちが丘をおおうように咲いています。そこをのぼれば、見
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