「カマシア」:童話/月乃助
 
 野原は、あたりいちめん紫の花のじゅうたんです。
 やさしい風が、あまいかおりをはこんでいきます。
 カマシアの花たちは、だれも春の日をいっぱいあびて、気持ち良さそうに顔を日にむけていました。
 のんびりと春の日とそよ風を楽しみ、きらきら光の中で、そのすけるような紫色をいっそう明るく見せています。
 遠くのほうで、音楽が聞こえるのは、公園の池の近くにあるバンド・ワゴンで演奏をしているのでしょう。
 どこからかカマシアの花たちを分けいるように、女の子がやってきました。
 その子は、花たちのまんなかにすわりこむと、ひざをかかえてしまいます。黒いまっすぐな髪をした子です。
 花たちが、きゅ
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