『ことばとからだ』/あおい満月
わたしのことばには、肉体がない
空間ばかりを愛したせいか
かたちあるものに
寄り添う術を
忘れてしまった
わたしのことば
わたしはいつも
浮遊している
死んだ血液のつめたさで
いつかいた場所に
かえりたい
迷路の奥の迷い子は
あなたを探している
人間が、
鳥や魚に焦がれるように
わたしのことばに
大地がほしい
吐く息のように
肉体の断片ばかりが
紙の上にちらばる
けしてひとつの
かたちにならない
空に向かい
わたしの雨を求める
目を開き
わたしの身体に
流れる雨音を聴く
肉体を
つくりだす雨
その雨に向かい
わたしはことばを問う
わたしを問う
肉体のない
わたしのことばは
何処へ向かい
何になるのか
あなたに
わたしのことばが
きこえるか
わたしのことばには、肉体がない
わたしのことばは
世界の空間の片隅に
ひとりふるえる
2009.6.7(Sun)
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