変声期/山中 烏流
きみが
あまりにもきみでいたがるのは
そのうつくしいこえに
みいられたからなのだろう
わたしもまた
おんなじように
そのこえにみいられているものだから
きっとわたしたちは
もう、そらをみあげることはない
*
甲高い声でなくきみが
校舎の窓、あるいは
体育館の重たい扉越しに
その姿をちらつかせて
私はその度に
いわゆる、欲望というものの種を
きみに撒き散らして
きみはそれを
いとおしそうに眺めている
眺めて、なめている
*
わたしは何があろうともわたしだ
きみが
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