かなづち/新守山ダダマ
夏という字が
憂鬱の憂の字に見えてしょうがなかった
僕にとって夏はまさに憂鬱の季節だった
小・中・高と、ずっと水泳の授業が嫌だった
僕は無類のかなづちなのだ
小学校の時、テストで無理矢理25mプールを泳がされて
めちゃくちゃな平泳ぎで何とか一度も足をつけずにゴールした時は
本当に死にそうだった
それでも高校まで、水泳の授業には毎回出続けた
幸か不幸か運動音痴なのに健康で
クラスメイトの何人かは泳げるくせに
仮病を使って休んだり見学したりしていたのに
僕は嘘をつく勇気がなくて我慢した
泳げなくてみんなに笑われてもひたすら我慢した
そんな僕は従順過ぎたのか
高校を卒業して
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