悲しきフィドル/キエルセ・牧
 
フィドルの音に気付く
まぶたが開かないので
夢か現実かは自信ない
つま先が湿っているし
酒のことを考えてみた


急に悲しくなってしまう
大声で怒鳴りたいぐらい
私は一生懸命だったのだ
まだフィドルは止まない
そうかここは墓地なのか


黒い森に入ると白い馬がいた
湖の底は泥で濁って見えない
テーブルから落ちたロウソク
空から小鳥が何羽か降り立つ
そんな光景がしっかり見えた


迷わないのが不思議だ
ゆっくり固まっていく
犬もいたかもしれない
耳の裏がどうもかゆい
いまフィドルが止んだ


石は冷たかった
仕事の途中だが
静かなのは嫌だ
土が私に触れた
横たわる私の死


09.6.2

戻る   Point(1)