ベビーカーの青空 /服部 剛
 
ベビーカーに寝かされて 
泣いている赤ちゃんを 
若い母が覗きこみ 
「痛いの痛い飛んでいけ」と囁けば 
不思議と笑みが浮かびます 

産声を上げた誕生の日から 
幾十年の月日は流れ 
大人になった人々は 
二本足で歩いているが 
ほんとうは誰もが 
透き通ったベビーカーに寝かされて 
今日も何処かへ、運ばれている 

人は皆 
行方(ゆくえ)知らずの明日を 
忘れたふりで 
今夜も帰りの電車を揺り籠に 
夢を見ながらうたた寝る・・・ 


( 眠りの内で 
  瞳を開いた 
  視界に広がる 
  あの日の、青空・・・)


どんなに年齢(とし)を重ねても 
永遠の子供はベビーカーに寝かされて 
背後から押す 
(何者か)の姿は見えぬまま 

ベビーカーは明日も 
行先の全てを任せて 
がらがらと 
路面の坂を、往くのです 







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