デクノボウの詩 /服部 剛
「コチラハ廃品回収車デス
御家庭デ不用ニナリマシタ
テレビ・エアコン・冷蔵庫等
壊レテイテモ、構イマセン 」
夕暮れ時に
2階の窓から眺めると
我家の前の川沿いの道を
不用の品を乗せた軽トラックが
ゆっくり
横切ってゆく
「リサイクル工場」へと走る
軽トラックに並ぶ故障品達に
私も一緒に紛れこみ
もっと出来のいい人間に
治してもらえぬものだろうか?
( これは永い間
胸にそうっと秘めている
私の切なる願いです・・・ )
「 壊レテイテモ、構イマセン 」
その幼げな女の声が
川沿いの道の向こうに
揺らめく赤い夕陽の方へ
優しく遠ざかってゆきます
2階の窓辺に、ぼうと立ち
胸の蓋の内側に内蔵された
赤いハートばかりが
どくん、と脈を打っている
デクノボウの僕を残して
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