レールウェイの先は霞んでいる/竜門勇気
 
ある
それはもう あたしたちよりずっと遠く ほとんど銀河中心域(ナカ)まで走っていく
その中には 最後の一人となった重要無形文化財な職人さんや
ものすごい功績を残した学者さん とんでもない大金持ち そんな人たちが
コールドスリープしたまま詰まってる
いつか 知識や特性をエミュレートできるまで 保存しておくんだって
あの路線はあたしたちみたいに ねむる時間を 止めるんじゃなくって
もっと不自然な何かを止めてるような気がして
あたしの止まった時間がよけいに罪深く感じた

加速はそんなことを思ってる間に 終わって
個室は地球(ユリカゴ)へ帰っていく
誰かがミシンからワープ装置を作らなくて だれかが
不可能性ドライブ(ハッピャク)なんて発明しなかったら
あたしは今頃 うちの 居間で なんだかねむれないよーって
誰かに電話してたりするのかな
誘眠発振(ミンザイ)のアラートが個室を照らしてる
あたしは 凍った時間の中にいる
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